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2026年5月の記事(全5件)
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2026.05.30
「こっちだよ」が聞こえた一週間
五月の空が日ごとに夏の色を深めていくこの頃。園庭には毎日、運動会に向けた練習の声が響いていました。かけっこのかけ声、お遊戯の音楽、弾む足音。初夏の日差しの下で、園じゅうが同じ本番を見つめていた一週間です🌱 見上げるまなざし その週の初め、いちご組(2歳児クラス)さんが初めての予行練習に参加しました。開会式からかけっこ、お遊戯、閉会式まで。かけっこで名前を呼ばれると「はい!」と元気にお返事ができて、日ごろの積み重ねがちゃんと形になっていました。緊張した面持ちの子もいましたが、保育者がそばに寄りそいながら、その子のペースを見守りました。 そして心に残ったのは、競技の合間のこと。いちご組さんは、大きいお兄さん・お姉さんの競技をじっと観ていたのです。「かっこいいね」「すごいね」——小さな声でつぶやきながら、あこがれのまなざしを送っていました。 お兄さん・お姉さんの競技をじっと見つめるいちご組(2歳児クラス)さん 伝え合う言葉、差しのべる手 翌日はさくら組(5歳児クラス)さんの英語の時間。この日は「Sendan Little Kitchen」の開店です。さくら組さんがお店屋さん、もも組(4歳児クラス)さんがお客さん。食べ物の準備も自分たちで整えて、お客さんを待ち構えます。 やってくると、注文からお会計まで、やりとりはぜんぶ英語。何度もあそびを重ねてきたからでしょう、スラスラと言葉が出てくる子が多く、注文が通るたびに、お店側もお客側も顔がほころびました。誰かに何かを伝え、それが相手にちゃんと届く。その手ごたえの積み重ねが、人と関わる楽しさを育てていくのだと感じます😊 英語で注文をやりとりする「Sendan Little Kitchen」— さくら組(5歳児クラス)さんのお店屋さん 木曜日には、うめ組(3歳児クラス)さんが運動会本番の親子競技「カード合わせ」の練習に取り組みました。この日は、さくら組さんが“親役”を引き受けてくれました。二人一組でカードを目指して走り、うめ組さんが選んだカードに、さくら組さんが優しく手を添えます。 「どれにする?」「こっちだよ」。走りながら交わされる声。ルールを覚えながら、二人で力を合わせて絵を合わせていきます。うめ組さんも、大きいお兄さん・お姉さんと組むと、不思議と流れに乗っていきました。 「こっちだよ」— カードを指さすさくら組さんと、見つめるうめ組(3歳児クラス)さん 手のひらから手のひらへ 一週間を通して私の心に残ったのは、「こっちだよ」と差しのべられる手のひらでした。いちご組さんは上の学年を見上げてあこがれ、さくら組さんは下の学年にそっと手を貸す。この縦のつながりの中でこそ、子どもは同じ時間を分かち合い、同じゴールを一緒に目指すよろこびを知っていくのではないでしょうか。あこがれる心も、世話をする心も、誰かに教えられて生まれるものではありません。園という毎日の暮らしの中で、自然と芽生えてくるものだと思うのです。 本番まで、園じゅうがもう少し同じ夢に向かって進みます。お子さんが「今日ね、お兄さんが手をつないでくれたよ」とお話ししたら、その日の誇らしい顔を、どうか一緒に思い浮かべてみませんか。当日、手のひらから手のひらへ渡っていくものを、楽しみにしていてください🌷

2026.05.23
「『くすぐったかったね』が絵になるまで」
五月も半ばを過ぎ、園庭の緑が日ごとに濃くなってきました。半袖で駆け回る子ども達が増え、風にも初夏の匂いが混じるこの頃です🌱。先日、子ども達がいちご園へ出かけました。真っ赤な実を頬張ったあの一日は、実はその日だけでは終わりませんでした。園に帰ってからの一週間、いちごは絵や絵の具に姿を変えて、子ども達の指先へと戻ってきたのです。 「美味し〜!」いちご園でのその日 いちご園に着くなり、うめ組(3歳児クラス)の子ども達から声が次々にあがりました。「あった!」「先生、見て〜大きいの!」、そして真っ赤な実を口に入れて「美味し〜」。出かける前に、緑・白・赤と色を変えていく実を絵本で観ていたからでしょうか、赤く熟れた実へすっと手が伸びていきます。中には、いちごの葉が足に触れて「くすぐったい」と身をよじる子もいました。 一方、さくら組(5歳児クラス)は、着くやいなや一目散に大きな実を探し当て、口いっぱいに頬張ります。同じ農園でも、5歳の子ども達は葉の形や、いちごが茎のどこから生まれているのかまで、しっかりと目に焼きつけていたようです🍓。 「あった!」赤く熟れたいちごへそっと伸びる、うめ組さんの手 帰ってからの一週間、指が思い出す いちご狩りの翌日、もも組(4歳児クラス)は画用紙に向かいました。「長い茎にいちごがなっていたよね?」と保育者に確かめたり、「真っ赤ないちご、たくさんだね」と、あの光景を嬉しそうに思い浮かべたり。友だちの絵をそっと覗きながら、自分の見てきたものを言葉と手で確かめ合っていきます。 昨日の景色を思い出しながら、画用紙に向かうもも組さん そして狩りから4日目、うめ組の保育室では、活けてある本物のいちごの葉をじっと観ながら絵を描いていました。「葉っぱはギザギザしてたよ」と気づいた子が、ふと手を止めてつぶやきます。「だから足がくすぐったかったのかなぁ?」。あの日の、足のくすぐったさにまでさかのぼって考えているのです。丸シールで花を表現し、5日間かけて、その子だけのいちごが一つ、静かに実りました。 「葉っぱはギザギザしてたよ」— 本物の葉と見くらべながら動く、うめ組さんの指先 思い出しながら、手が動く 一日の体験が、その日では終わらず、翌日、また次の日へと形を変えて続いていく。私は、この「思い出しながら手を動かす」時間にこそ、子どもが育つ確かな芽があると思っています。 くすぐったさ、赤い色、葉のギザギザ——五感で受け取ったものが子どもの内側にそっとしまわれ、やがて「あれは何だったんだろう」「もう一度あらわしてみたい」という気持ちになって、指先からあふれ出してくる。誰かに言われて描いたのではありません。自分の中から湧いてきたその気持ちこそが、これから先、自ら学びに向かう力の源になっていくのだと、長年子ども達を観てきて感じています。友だちと「こういうのがあったよね」と同じ景色を分かち合う時間もまた、人を信じ、共に生きるよろこびの土台になっていくのですね。 体験が記憶になり、表現になって、また次の体験へ — 子どもの中でめぐる学びの輪 ご家庭でも、お子さんが園での出来事をぽつりと話し出すことはありませんか。すぐには出てこなくても、あの日の景色は、指先のどこかにちゃんとしまわれています。「どんないちごだった?」と、そっと聞いてみてください。思い出をたぐるその時間が、また新しい何かに変わっていくかもしれませんね🌿。

2026.05.16
「これがいい」から、夢中は始まる
新緑がまぶしくなり、園庭を渡る風にも初夏の匂いが混じるようになりました。運動会に向けた準備や、夏野菜の苗植えが本格的に始まり、子ども達の毎日はいつにも増して賑やかです。そんな一週間、園のあちこちで同じ言葉が聞こえてきました。「これがいい」。誰かに言われたからではなく、自分で選び取った子ども達の声です。🌱 「これがいい」の声があちこちで いちご組(2歳児クラス)では、傘の製作をしていました。カタツムリやカエルの写真をじっと見て、雨の日のイメージを膨らませてから、青いシールを雨粒に見立てて貼っていきます。「雨、雨」とつぶやきながら貼る位置を真剣に考える子。「雨くっついちゃった」と傘の面にぺたりと貼り付けて笑う子。同じシールでも、貼る場所は一人ひとり違います。「ここに決めた」——その小さな一言に、自分で決めた誇らしさが滲んでいました。 「ここに決めた」——青いシールを雨粒に見立てて貼るいちご組(2歳児クラス) うめ組(3歳児クラス)では、運動会の障害物走でもらえる「宝物」作り。王冠・メダル・ネックレスの三つから、それぞれ「これ」と選んだものを作っていきます。同じ王冠でも、白い所がなくなるように折り紙を重ねて貼る子、重ならないように並べて貼る子。「赤だね、青だね」と色を選ぶ手つきにも、こだわりが表れます。出来上がると友だちと見せ合い、頭に合わせたり胸元に置いたり。「見てみて、出来上がったよ」と得意げな顔が並びました。👑 「見てみて、出来上がったよ」自分で選んだ王冠を見せ合ううめ組(3歳児クラス) 選んだから、こんなに丁寧 もも組(4歳児クラス)のこの日は、前のクラスの話し合いで自分たちが決めた夏野菜の苗を、いよいよ植える日でした。どうやって植えるのか説明をしっかり聞いて、プランターに土を入れ、優しく苗を植えていきます。「オクラ植えたんだ!」「私はトマトにしたよ!」——植え終わると、口々に自分の選んだ野菜を報告し合い、たっぷりと水をあげていました。自分で選んだ苗だからこそ、これからの水やりや世話にも、きっと張り合いが生まれていくのでしょう。 自分で選んだ夏野菜の苗に、たっぷりと水をあげるもも組(4歳児クラス) さくら組(5歳児クラス)では、運動会に向けた万国旗づくりが進んでいました。ずらりと並んだ見本を前に、友だち同士で話し合いながら、描きたい国を選んでいます。「星がある国旗にしよう」「黒の線が入っているのがかっこいいよ」。決めた後の塗り方にも、一人ひとりの工夫が光ります。色をくっきり出そうと力を込める子、小さな星が消えないように周りを縁取ってから塗り始める子。同じ国の国旗でも、同じものは一つとしてありません。 描きたい国を選び、色を丁寧にのせていくさくら組(5歳児クラス)の万国旗づくり 選ぶ、ということ 四つのクラスを覗いて、私は改めて思いました。「これがいい」と自分で選ぶとき、子どもの目は違う輝きを帯びるのだ、と。誰かに言われて動くのではなく、自分の内側から「これをやってみたい」という気持ちが湧いてくる。その気持ちこそが、丁寧に塗る手や、優しく苗を包む指先や、貼る場所を選び抜くまなざしを生んでいるのだと思います。二歳の「ここに決めた」から、五歳の「こう塗りたい」まで。選び取る力は、こんなにも早くから、こんなにも豊かに育っているのですね。この小さな「自分で決めた」の積み重ねが、やがて自分の力でやり遂げる自信につながっていくと、私は信じています。 運動会の日、我が子が身につけている宝物や、はためく万国旗を見かけたら、どうか聞いてみてください。「これ、どうやって選んだの?」と。きっと、その子だけの物語が返ってくるはずです。次の一週間、子ども達がまた何を「これがいい」と選ぶのか、私も楽しみにしています。🎏

2026.05.09
『あのお兄さんみたいに』が芽ばえた一週間
大型連休が明け、園庭の木々の緑が一段と濃くなりました。久しぶりに友だちの顔がそろった園庭には、いつもより少し高い声が響いています🌿。この一週間、私はあちこちで同じひとつの光景に出会いました。小さな子が、大きな子の背中をじっと観ている——そんな姿です。 ちいさな観察者たち 連休明け、久しぶりに園庭へ出たすみれ組(1歳児クラス)。ちょうどその日、園庭ではさくら組(5歳児クラス)のお兄さん・お姉さんがかけっこの練習をしていました。それに気づいた子は、その場に立ち止まってじっと観ています。かと思えば、真似をして一緒に走りだす子。ブランコに乗りたくて、両手を差し出し「かーしーて」と身振りで合図を送る子。担任は「それぞれのあそびの中に、一人ひとりの変化や成長が感じられました」と振り返っていました。 同じ連休明け、いちご組(2歳児クラス)の朝の会。休み明けで泣いてしまう子が多いのではと構えていた担任は、思いがけない姿に出会います。ある子が、みんなに整列を促したり、泣いている友だちにそっと寄り添ったり——「クラスのお手本になりたい」という気持ちが、その小さな背中いっぱいににじんでいたそうです。すると、その姿を観た子が「自分もしなくちゃ」と動きだす。憧れは、同じ年齢の中でも静かに伝わっていくのですね。 見られて、伸びた背すじ 翌日、もも組(4歳児クラス)は初めてバスに乗って、さくら組(5歳児クラス)のスイミングの見学に出かけました。到着したときは少し緊張気味だった子ども達も、プールの中の年長さんが見えると、表情がふっとやわらぎ、真剣な眼差しに変わります。「かっこいいな」「私もやりたい。出来るかな」——憧れの言葉が次々にこぼれました。 プールの中の年長さんを見つめる、もも組さんの真剣な眼差し 帰りのバスでは「青いゾウは男の子、ピンクのゾウは女の子」「プールでのお約束は?」と、子ども同士で確かめ合う姿が。観て終わりではなく、憧れがもう自分たちの言葉になって動きだしていました🚌。 そして同じ日のプールサイド。もも組が見に来ていると知ったさくら組(5歳児クラス)は、「かっこいい姿を見せたい」と朝から張り切っていました。前の回は楽しくなりすぎて注意を受けることもあったそうですが、この日は先生の話をよく聞いて頑張る姿があり、コーチから「出来るようになってる」と褒めてもらったのです。見られる側になった経験が、いつもより一段深い集中を引き出していました。 もも組さんに見られながら、コーチの話にぐっと集中するさくら組さん あこがれは、自分の中の火を灯す この一週間、下の子は上の子を観つめ、上の子は見られることで背すじを伸ばしました。憧れというのは、誰かに「やりなさい」と言われて生まれるものではありません。心の奥がふっと動いて、「あんなふうになりたい」「やってみたい」という火が、自分の内側から灯る。その火こそが、子どもを次の一歩へと押し出していくのだと、私は長年の保育の中で感じてきました。そしてその火は、たいてい一人では灯りません。同じ時間、同じ場所で、誰かと心を響かせ合ったときに点るのです。見る子と見られる子、その間を行き来する眼差しの中で、子ども達は互いに育ち合っています。 ご家庭でも、お子さんが誰かの真似をしてみせる瞬間があったら、どうか「あんなふうになりたいのね」と、その芽を一緒に喜んでみてください。憧れは、未来へ向かう小さなエンジンです。次はどんな「やってみたい」が生まれるのか、私も楽しみにしています🌱。

2026.05.02
砂がケーキに、枝がロウソクに〜みたての一週間
新緑がまぶしく、こいのぼりが気持ちよさそうに風を泳ぐ季節になりました🎏。園庭では半袖で駆けまわる子も増えてきました。この一週間、園のあちこちで「これ、○○みたい」という小さな声が聞こえてきます。手のなかの何でもないモノが、子ども達の一言で、まるで別のモノに変わっていくのです。 その手のなかで、あそびが生まれていく すみれ組(1歳児クラス)の子ども達が、ボールプールであそんでいた日のこと。しばらくすると、それぞれの手が思い思いに動きはじめました。牛乳パックの蛇腹を、絵本みたいに一枚ずつめくってみる子。ゴールにボールを投げ入れては「ポン!ポン!」と声をあげる子。ボールが溜まると、チャックのつまみを小さな指でつまんで、一生懸命に開けようとする子。大人ならつい見過ごしてしまう部分が、この子達にはとびきり面白く映っているようです。 牛乳パックの蛇腹を、絵本みたいに一枚ずつめくってみる(すみれ組) いちご組(2歳児クラス)では、雨あがりの湿った砂が、子ども達の心をくすぐりました。はじめは型抜きでケーキを作り、パクッと食べるまね。すると一人の子が木の枝を持ってきて、「ロウソクだから、ケーキにつけようよ」。保育者が口ずさむ「ハッピーバースデイトゥーユ〜♪」に、「先生、ケーキ!一緒に歌おうよ」と、まわりの子が自然と集まってきます。砂場は、いつのまにかみんなの誕生会場に変わっていました🎂。 砂のケーキに枝のロウソクを立てて、みんなでお誕生日会(いちご組) もも組(4歳児クラス)は、いつも親しんでいる国旗のカードを、この日は自分で塗ってみました。「これはインド」「オーストラリアかな」と、友達と確かめ合いながら。外の縁から塗る子、まん中の模様から塗りはじめる子、塗り方は一人ひとり違います。塗り終えた旗をみんなで並べてつなげてみると――「お祭りみたいだね」。色とりどりの旗が連なる眺めに、思わず歓声がもれました。「運動会、たのしみ」。その声には、少し先の日々への期待もにじんでいます。 自分で塗った国旗をつなげたら、まるでお祭りみたい(もも組) 見立ての先に、未来の力 同じ一週間に、素材はまるで違うのに、どのクラスでも「これは○○みたい」という見立てが自然に生まれていました。牛乳パックも、砂も、一枚のカードも、大人にとってはただのモノです。けれど子どもは、だれかにうながされてではなく、自分の内側からわいてくるおもしろさに引かれて手を動かします。そのわくわくこそが、何でもないモノに新しい命を吹き込んでいくのですね。そして砂場の誕生会のように、その面白さは決して一人にとどまりません。だれかと同じ時間、同じうれしさを分かち合う経験こそが、人を信じ、仲間とつながっていく心の土台になると、私は思っています。 おうちでも、お子さんが「これ、○○みたい」とつぶやいたら、どうか一緒に面白がってみてください。その小さな見立ての一つひとつが、未来へ向かう力を育てていきます。何でもない毎日のなかにある夢中の芽を、これからも一緒に見つけていきましょう☺。
