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2026年の記事(全17件)
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2026.08.03
「これ、○○みたい!」見立てが広げる夏のあそび
梅雨が明け、園庭にはセミの声と子ども達の歓声が響く季節になりました🌻 水あそびに絵の具あそび、外へ内へと、あそびの舞台もにぎやかです。そんな今週、園のあちこちで同じような声が聞こえてきました。「ねえ、これ、○○みたい!」目の前のただのモノが、ふとした瞬間に別の何かへ姿を変える——子ども達の見立てが、あそびをぐんと広げた一週間でした。 葉っぱも、色水も、特別なモノに 久しぶりのベビーガーデンに出かけた、すみれ組(1歳児クラス)の子ども達。可愛らしい葉っぱを一枚見つけると、宝物を扱うように、そっと大事そうに握りしめていました。トンボが飛んでくれば、「まってー」「おいで」とお友達と一緒に追いかけて。大人にとってはなんてことのない一枚の葉っぱ、一匹のトンボが、この子達にとってはかけがえのない特別なモノなのですね。 宝物みたいに、そっと握りしめた一枚の葉っぱ(すみれ組・1歳児クラス) いちご組(2歳児クラス)では、2回目の色水あそび。ポンプの使い方もぐっと上手になり、それぞれが思い思いの「ミックスジュース」を作っていきます。自慢の一杯ができあがると、椅子に腰かけてお友達と「かんぱーい!」。飲んだフリをしては「美味しいね」と笑い合う姿が、なんとも微笑ましいのです🥤 あそび終わりには、ペットボトルで作ったシャワーから水がこぼれ落ちる様子をじっと眺めて、「雨みたいだね」と、こんどは空を思い浮かべていました。 「かんぱーい!」自慢のミックスジュースで乾杯するいちご組さん(2歳児クラス) 花火と、ドラゴンフルーツ うめ組(3歳児クラス)が挑戦したのは、画用紙に垂らした絵の具をストローで吹き広げる「吹き絵」です。水が溜まりすぎるとうまく広がらないと気づいて量を加減したり、赤と青が重なって紫になる不思議に目を丸くしたり。試しては確かめる、その手つきは真剣そのものでした。やがて出来上がった作品を眺めた子ども達から、「花火みたい!」の声が。そこからは「お祭り行ったよ!」「お家でやった!」と、夏の思い出話で大盛り上がり🎆 担任もその声を受けて、次は花火のあそびへと計画を組み直したそうです。 ストローで吹き広げてできた、うめ組さんの「花火みたい!」な吹き絵(3歳児クラス) さくら組(5歳児クラス)では、「フルーツバスケットをしよう!でも、フルーツがないね」という保育者の投げかけに、「作れば良いんだよ」と、すぐに答えが返ってきました。「どんなフルーツがある?」と尋ねると、りんごやぶどうに交じって、大人も驚く「ドラゴンフルーツ」まで飛び出します。無いものは自分達で生み出していく——さすが年長さんですね。翌日もそのカードであそびは続き、順番でちょっぴり心細くなる子がいると、周りの子が自然と寄り添う姿もありました。 見立てる、ということ 長年、子ども達のあそぶ姿を観てきて、私がいつも心を惹かれるのが、この「見立てる力」です。目の前にあるのは、色のついた水、絵の具の飛沫、庭に落ちた一枚の葉っぱに過ぎません。けれど子ども達は、そこに自分だけの物語を見つけ出します。誰かに「こう見なさい」と教わったわけではなく、自分の心がふっと動いた一瞬から、水は甘いジュースになり、飛沫は夜空の花火になるのですね。面白いのは、一人の「みたい!」がすぐに隣の子へと伝わっていくこと。乾杯ごっこになり、お祭りの思い出話になり、あそびはどこまでも広がっていきます。私は、こうして自分で意味を見つけ、それをお友達と分かち合っていく経験こそが、子ども達が自分の力で世界を面白がっていく根っこを育てているのだと思うのです。 夏は、子ども達の感性がぐんと豊かに育つ季節です。ご家庭でも、お子さんがふと口にする「これ、○○みたい!」に、ぜひ耳を傾けてみてください。その一言の中に、その子だけのまなざしが、きっと光っているはずです。次はどんな「みたい!」に出会えるでしょう。夏のあそびは、まだまだ続きます。

2026.07.26
「あ、変わった!」に見入った一週間
セミの声が園庭に響きわたり、水あそびが待ち遠しい季節になりました☀️ 今週、園のあちこちを歩いていると、0歳児クラスから5歳児クラスまで、子ども達が同じ表情をする瞬間に何度も出会いました。目の前で何かがゆっくり姿を変えていく——その一瞬に、ふっと手を止めてじっと見入る顔です。今週はどうやら、「変わっていくモノ」が園中の主役だったようです。 「あ、変わった!」——色と水に見入る いちご組(2歳児クラス)では、食紅で作った色水を混ぜるあそびが広がりました。自分で色を足す子は、変わったあとの色に「すごーい」と歓声をあげます。保育者が少しずつ色水を注ぐと、今度は変わっていく途中に目が吸い寄せられていきます。「赤と青を混ぜると紫になるんだね」と発見を隣の子に伝え、「これ何味のジュース?」の問いには「いちご味」「バナナ味」と、色から味まで想像がふくらんでいきました。 色水がゆっくり紫に変わっていく瞬間を見つめるいちご組さん(2歳児クラス) ひよこ組(0歳児クラス)にも、初めて出会うセンサリートイに子ども達が集まってきました。指先で触れると、中の液体がジュワ〜と形を変えて広がります。歩ける子は上にのって足の裏で凹凸を確かめ、別の子は指でそっと押してはまた動くのをじっと見つめます。「これ、なんだろう」——言葉にならないその問いが、小さな指先から確かに立ち上がっていました。 指先で触れた液体がジュワッと形を変えていくのを、じっと見つめるひよこ組さん(0歳児クラス) 手が動いて、あそびが姿を変える うめ組(3歳児クラス)は、前回の泥んこあそびから思いがけない展開を見せました。池と池をつなぐ水の通り道を作る子が現れ、そこへ車を走らせたり、トンネルを運んで道を長くのばしたり。誰かが言葉で仕切るわけでもないのに、手が先に動き、水の流れとともにあそびそのものが姿を変えていきます。片付けの頃、「今日は川が出来た」というつぶやきが聞こえてきました。作ろうと決めた川ではなく、夢中で手を動かすうちに、いつのまにか生まれていた川だったのですね。 さくら組(5歳児クラス)は、前日のシャボン玉あそびからバブルアートへ。ストローで息を吹き込むと、シャボン玉のときよりずっと細かい泡が次々にわいてくることに驚きます。前日「息の強さで大きさが変わる」と見つけていた子は、その学びをそのまま持ち込んで、泡を高く高く積み重ねていきます🫧 できた泡にそっと触れて感触を確かめる子も。昨日の発見が今日のあそびに橋を架けていく——その連なりに、私はしばらく見入ってしまいました。 ストローで吹き込んだ細かい泡を高く高く積み重ねていくさくら組さん(5歳児クラス) 立ち止まる、その一瞬に 「あ、変わった!」と立ち止まるあの一瞬に、子どもの学びの芽が詰まっていると、私は思うのです。姿を変える色や泡や水を「不思議だな」と感じて心が動くからこそ、「もう一回」「今度はこうしてみよう」と、自分から手が伸びていく。誰かに言われてではなく、内側からわいてくるその力こそ、これから先どんなことも面白がって学んでいく、未来の土台になるのだと感じています。 そして忘れてはならないのは、その驚きのそばに、いつも一緒に「わあ」と目をまるくする大人がいたことです。子どもの発見に大人が心から共鳴するとき、その喜びは何倍にもふくらむのですね。 保護者の皆様、ご家庭でもきっと、お子さんが何かにじーっと見入る瞬間があるはずです。牛乳に溶けるココア、お風呂の泡、窓を流れる雨のしずく。そんなとき、正解を教えるより先に、隣で一緒に「ほんとだ、変わったね」と眺めてみませんか。その小さな時間の積み重ねが、子どもの夢中を、そっと未来へつないでいくのだと思います🌱

2026.07.18
ぬるぬる、ひんやり、どろどろ ― 手でつかまえた夏
うだるような夏の日差しの中、園庭の水道からこぼれる水がきらきらと光り、子ども達の歓声が響いています☀ 一学期も、いよいよおしまい。この一週間、園のあちこちで「はじめての手ざわり」との出会いが広がりました。絵の具のぬるぬる、水のひんやり、泥のどろどろ。体ごと飛び込む子もいれば、そっと様子をうかがう子もいて、一人ひとりが自分のやり方で、夏の感触に近づいていきました。 小さな指が、はじめてつかむ色 ひよこ組(0歳児クラス)は、指スタンプで絵の具に触れました。はじめは不思議そうに、赤い絵の具をじっと見つめる子ども達。保育者がそっと手を添えて一緒に触れると、指先をグーパーと動かしながら、ぬるぬるした感触を確かめているようです。「これは 何だろう?」「赤い絵の具だよ」。足形の上に指先でペタッと押すと、色が変わって模様がつきました。「わっ 色がついた」と、ちょっぴり驚いた顔。回を重ねるうちに、自分から指を出して思いきり触る姿も見られるようになりました。 赤い絵の具に指先でそっと触れるひよこ組さん(0歳児クラス) すみれ組(1歳児クラス)は、はじめてのクレヨンでのなぐり書き。「私も、僕もやってみたい!」とやる気いっぱいで、ぐるぐる線を描く子、トントンと点を打つ子と、表現はさまざまです。その中に、指が汚れるのが苦手で、はじめは少し離れて見ている子がいました。保育者が隣で一緒に少しずつ試してみると、やがて自分からクレヨンを手に取り、ほんの少しですが描くことができました。うれしそうな横顔に、感触への小さな一歩が刻まれた瞬間を見た思いがしました。 水はひんやり、泥はどろどろ いちご組(2歳児クラス)は、幼稚園でのはじめての水あそび。水着に着替えている頃から、もうわくわくが止まりません。テントの下、穴の空いたペットボトルから水がぱらぱらと降ってくると、「気持ちいい〜」と大喜び💧 ペットボトルのおもちゃで頭から水をかぶる子もいます。「ちゃんと持っててね」「シャワーみたいだね」と、友だちと言葉を交わしながら。一方、着替えを嫌がっていた子は、水あそびが始まると自分から何度もプールの近くまで見に行っていました。参加までの距離はそれぞれでも、みんな自分なりの出会い方で、水と向き合っていたのです。「お水って、気持ちいいね」。 ペットボトルのシャワーに大喜びのいちご組さん(2歳児クラス) うめ組(3歳児クラス)は、はじめての泥んこあそび。最初は感触に慣れず、砂場の外で遊んでいた子も、少しずつ慣れてくると、顔に泥がついても気にならないほど夢中になっていきます。やがて一人の男の子が砂を掘り、砂場道具でトンネルをつくって、水の通り道を生み出しました。すると、それを見ていた子が加わって「川」にし始め、周りの子も次々と手を貸していきます。泥だらけになりながら、たった一つの水たまりから、あそびがどんどん広がっていきました。 掘った川に水を流して、みんなで泥んこになるうめ組さん(3歳児クラス) それぞれの距離で、自分の「はじめて」を この一週間、私がいちばん心を動かされたのは、どの子も誰かに言われて動いたのではなく、自分の間合いで、はじめての感触に手を伸ばしていったことです。体ごと飛び込む子も、遠くからそっと眺める子も、みんな自分で「今だ」という瞬間を選んでいました。「これは 何だろう」「やってみたい」――心の奥から湧いてくるその小さな声こそが、子どもが学びに向かっていく、いちばんのエンジンだと私は思っています。そして、一人の子が始めた泥の川に仲間が集まっていったように、同じ時間を分かち合う喜びは、次のあそびを生み、やがて人を信じる心の土台になっていくのですね。 それぞれの距離で、夏の手ざわりに手を伸ばす子ども達 一学期のあいだに、子ども達はたくさんの「はじめて」に出会いました。夏休みは、おうちでも水や砂、絵の具にたっぷり触れられる季節です。少しだけ汚れることを大目に見て、指先や足の裏で感じる小さな発見に、一緒に「気持ちいいね」と笑い合ってみませんか。二学期、ひとまわりたくましくなった子ども達に会えるのを、楽しみにしています😊

2026.07.11
「昨日の続き」が、明日の夢中を呼ぶ
梅雨明け間近の気配が漂い、園庭では蝉の初鳴きが聞こえ始めました。夏休みへ向かうこの時期、今週は「昨日の続き」を子ども達自身が引き寄せる姿が、いくつものクラスで重なりました。単発の活動報告ではなく、日をまたいで遊びが育っていった一週間の話です。 しゃぼんだまが、翌日のアートに うめ組さん(3歳児クラス)は、前日のしゃぼんだま遊びから、翌日「しゃぼんだまアート」へと歩を進めました。ストローを「ぶくぶくぶく~」と吹き込むと、色付きの泡がこんもり立ち上がります。台紙にそっと置くと、泡はふっと消えて、模様だけが残るのです。大興奮でストローを吹いた次の瞬間には、新聞紙の上でじっと泡を見つめて「泡が消えたね」と言葉を交わしていました。昨日「きれい」と感じた気持ちが、翌日「やってみたい」の形になって現れていましたね。 ストローで色付きの泡を吹き上げる、うめ組さん(3歳児クラス)の真剣な表情 「足がないね」— 自分で見つけた次の一歩 いちご組さん(2歳児クラス)では、前日はじき絵で描いたダンゴ虫が乾いて、両面テープで目と口を付ける日でした。「ここはどうだろう?」「これなら可愛いかな」と、一人ひとりが真剣な顔で位置を選びます。世界にひとつだけのダンゴ虫が並んだ頃、子ども達から「足がないね」という声が自然に上がりました。誰に言われたのでもなく、自分達で見つけた次の一歩です。次は足付けに挑戦するそうです。🐛 両面テープでダンゴ虫の目と口をそっと貼る、いちご組さん(2歳児クラス)の小さな指先 三日がかりのアイスクリーム もも組さん(4歳児クラス)はアイスクリーム製作の三日目でした。前々日に画用紙のアイスを切り、前日にコーンやカップを描き、この日は子ども達自身から「アイスにはスプーンが必要だよ」「大きないちごをのせたいな」と、添えたいものの声が上がりました。思い描く形にするのに苦戦する子もいましたが、「こんな形かな?」と友達と相談しながら、それぞれのオリジナルアイスができあがっていきます。三日かけて少しずつ育つ夢中の姿がありました。🍨 スプーンやいちごを添えて仕上げる、もも組さん(4歳児クラス)のオリジナルアイス 帽子は、材料から自分で決める さくら組さん(5歳児クラス)では、前日新聞紙で帽子を被った経験から「もっとこうしたい」が広がりました。この日はデザインも材料も一人ひとりが自分で決める時間です。「サンタさんみたいな帽子がいいな!」「猫の形にする!」と形が決まると、「段ボールで作れるかな?」「折り紙を使いたい!」と素材の相談まで自分達で進めていきます。塗り絵から始まった帽子への興味が、被る → 本物を作る → 材料から自分で決める、と一段ずつ階段を上っていく姿でした。 園長のまなざし 総幼研のハンドブックに『「なぜ?」「どうして?」と、子どもたちが自ら疑問や興味を持ち、主体的に問いを立て』る、「探究」という姿があります。この一節を読むたび、園庭で観てきた子ども達の姿と重なるなあと思います。しゃぼんだまがアートに、ダンゴ虫が「足がないね」の次の一歩に、アイスがスプーンといちごに、新聞紙の帽子が段ボールの帽子に。誰かに「やりましょう」と言われたのではなく、子ども達自身が「昨日の続き」を今日に引き寄せていましたね。 お家でも、昨日の遊びの続きが今日そっと顔を出す瞬間があるのではないでしょうか。「次はこうしたい」の小さな声に、耳を澄ませてみませんか。夢中の芽は、案外そんな小さな「続き」から静かに伸びていくのかもしれませんね。🌱

2026.07.04
『チョンチョン』そっと触れた、その先へ
梅雨の晴れ間☀️、境内のあちこちから子ども達の声が響いてきます。じっとりとした空気の中にも、どこか夏の気配が混じりはじめました。この一週間、園のいろいろな場所で見られたのは、小さな指先がそっと何かに「触れてみる」姿でした。 そっと触れてみる、その勇気 境内に出た日、ひよこ組(0歳児クラス)の子ども達が大仏様の前でみんなで挨拶をすると、じっと見上げる姿がありました。足元にはたくさんの石が転がっています。ある子が指先で「チョンチョン」と石に触れ、また別の子はぎゅっと握りしめて、その感触を確かめているようでした。シートを離れ、ハイハイで境内を進んでいく子もいます。手のひらについた小さな石をじっと見つめて——嫌がるどころか、確かめるように。0歳の子どもが、自分の手で世界に触れていく。その一歩の確かさに、はっとさせられました。 小さな手のひらに、境内の石をそっと(ひよこ組・0歳児クラス) すみれ組(1歳児クラス)では、保育者が見つけたダンゴムシに、子ども達が興味津々で集まってきました。けれど「触りたいけれど、ちょっぴり怖い」。指を近づけては、さっと引っ込める。その繰り返しです。どうするのかなと見守っていると、ある子がどこからか小さな枝を持ってきて、そっとツンツン。「これなら大丈夫」と言わんばかりの表情でした。触りたい、でも怖い。その気持ちのあいだで、自分なりの方法を見つけていく。誰かに教わったのではなく、自分で考えた一手ですね。 『これなら大丈夫』小枝でそっとダンゴムシに触れて(すみれ組・1歳児クラス) 触れることから、知りたいへ うめ組(3歳児クラス)は、すっかりダンゴムシに夢中です。この日は絵の具で塗った紙皿に、ハサミで細く切った触角を貼り、割りピンで留めて、自分だけのダンゴムシを完成させました。開いたり閉じたり動かせると知って、「本当のダンゴムシだ!」と目を丸くする子ども達。「触角?」と、新しい言葉も飛び出します。自由あそびの時間には、ある子が図鑑を持ってきてダンゴムシのページを開くと、まわりの子も次々に集まって、一緒にのぞき込んでいました🔍。触れて、作って、そして調べてみたくなる。好奇心が、次の好奇心を連れてくるのですね。 図鑑を囲んで、みんなでダンゴムシのページをのぞき込む(うめ組・3歳児クラス) さくら組(5歳児クラス)は、バケツで育てている稲の観察です。どれくらい大きくなったかを、絵と文章にまとめていきます。ある子は自分のこぶしを稲にあてて、「この間はこぶし2個分だったけど、今日は12個分もあった」と、身体そのものをものさしにしていました。「66センチあったよ」と、数で捉える子もいます。葉っぱに触れて「ベタベタ」「ザラザラ」と感触を言葉にする姿も。目で見るだけでなく、手で触れて、稲の変化をまるごと捉えようとしているのですね。 こぶしをものさしに、稲の高さを測るさくら組さん(5歳児クラス) 指先の先にある『なんだろう』 石に、虫に、葉っぱに。この一週間、0歳から5歳までの子ども達が、それぞれのやり方で「触れてみる」一歩を踏み出していました。触れてみたいけれど、少し怖い。その小さなためらいを自分で越えたとき、子どもの中には「なんだろう」「もっと知りたい」という火が灯ります。内側から自然に湧いてくるこの気持ちこそが、やがて学びに向かう力になっていくのだと、私は長年の保育の中で確かに感じてきました。大切なのは、触れる方法を大人が決めてしまわないこと。枝を持ってくるのも、こぶしで測るのも、子どもが自分で見つけた道なのですから。 ご家庭でも、お子さんが何かにそっと手を伸ばす瞬間があったら、どうか少しだけ待ってみてください。その指先の先に、その子だけの「なんだろう」が広がっています。夏本番、園庭の生き物たちもいよいよにぎやかになってきました。次はどんな「触れてみた」に出会えるでしょう。楽しみですね🌱

2026.06.27
小さな指が『考えて』いた一週間
梅雨空の続く六月の終わり、雨の合間に園庭の紫陽花がしっとりと色を深めています☔。この一週間、保育室をのぞくと、どのクラスからも、走り回る賑やかさとは少し違う、指先に神経を集めた静かな熱気が伝わってきました。園じゅうで、小さな指たちが一斉に『何か』を掴もうとしていたのです。 「つまむ」から始まった、小さな挑戦 すみれ組(1歳児クラス)の子ども達は、洗濯バサミであそんでいました。ある子は驚くほどの集中力で、台紙にひとつ、またひとつと、一人で二十個近くもつけていきます。褒められると、それはそれは嬉しそうな顔。人の顔の台紙を気に入った子は、洗濯バサミを『髪の毛』に見立てて、自分の手でつけようと夢中です。指先で『つまむ・はなす』を確かめる時間は、その子その子が自分の力でたぐり寄せた『できた!』の連続でした。 洗濯バサミをひとつ、またひとつ。「できた!」が積み重なるすみれ組さん(1歳児クラス)の手元 いちご組(2歳児クラス)では、ペットボトルの蓋やネジをつなげるあそびが始まりました。ある子が長くつなげていくのを観ていた別の子が、『長くしたい』とぽつり。どうしたら繋がるのか、保育者や近くのお友達にたずね始めます。はじめにやり方を細かく説明しなかったからこそ、子ども達は自分の頭で工夫していました。長くつなげると嬉しそうに見せに来たり、できないお友達にそっと教えてあげたり。まねる、考える、たずねる——そのすべてが、小さな指先を通して起きていました。 ペットボトルの蓋を長くつなげて、うれしそうに見せに来るいちご組さん(2歳児クラス) 危ない道具が、「思い通りの道具」になる うめ組(3歳児クラス)は、七夕製作で三角つなぎに挑戦していました。好きな色の折り紙を選び、角と角をそっと合わせて三角に折り、線の上をはさみで二回切っていきます。左手で紙をしっかり持ち、線をよく観て手を動かす姿は、なかなかの職人ぶり。糊をつけるときには『ちょっとだけ』とつぶやいて、指に取る量を自分なりに加減し、三角をずらして貼っていました。少し前まで『危ないから』と大人が構えていたはさみと糊が、この子達の手の中で、いつのまにか『思い通りにする道具』へと変わっていたのです。 線の上をはさみで二回切り。折り紙をしっかり持って進めるうめ組さん(3歳児クラス)の職人ぶり さくら組(5歳児クラス)が作っていたのは、七夕の提灯です。折り方、切る向き、切る場所に気をつけて進めるうち、『切る細さで提灯の感じが変わる』ことに気づいた子ども達。『僕は細かくいっぱい切ってみる!』『私は十個くらい切ったよ!』と、出来上がった提灯を近くのお友達と見せ合い始めました。細かく動かすか、大胆に動かすか。その選び方ひとつで、世界に一つの、その子だけの提灯になる。指の使い方がそのまま『その子らしさ』になるという発見が、さくら組の中で自然に立ち上がっていました✨。 切る細さのちがう提灯を見せ合うさくら組さん(5歳児クラス)。「僕は細かくいっぱい」「私は十個くらい」 小さな指が、「考えて」いた この一週間、私がいちばん心を動かされたのは、どの子の指先の奥にも、確かに『考え』が宿っていたことです。二十個の洗濯バサミも、『長くしたい』の一言も、『ちょっとだけ』の糊も、誰かにやらされたものではありません。子どもの内側から『やってみたい』が湧き、その気持ちが小さな指を動かしていく。私は、この内から湧く力こそが、これから先どんな学びにも向かっていける、いちばん確かなエンジンだと考えています。真似てみて、つまずいて考えて、思いきってたずねてみる——自分で見つけた『できた!』は、教わって得たものよりずっと深く、その子の自信として残っていくのだと思います。 つまむ→つなげる→切る・貼る。年齢が上がるにつれ、指先の育ちがやわらかく積み重なっていく ご家庭でも、お子さんが何かを一心につまんだり、ちぎったり、貼ったりしている時間があれば、どうか少しだけ、そっと見守ってみてください。うまくできなくても、その小さな指は、いま懸命に『考えて』いるのですから。夢中で動く指先の先にこそ、未来へ向かう力が育っていくのだと思います🌱。

2026.06.20
「なんだろう?」が図鑑をひらく手になる一週間
梅雨の晴れ間と雨とが交互に訪れ、園庭の紫陽花が日ごとに青を深めています。雨上がりの朝には、葉の裏からそっと顔を出したカタツムリに足を止める——そんな季節になりました。今週は園のあちこちで、まだ言葉にならない小さな「なんだろう?」が、いくつも生まれた一週間でした。 見つめて、真似て、触れてみる — ひよこ組とすみれ組 ひよこ組(0歳児クラス)では、初めて出会う音の鳴る玩具を、子ども達がじっと見つめていました。「これは、なんだろう」。まだ声にはならないけれど、そのまなざしは確かにそう問いかけているようでした。保育者が手に取ってカラカラと鳴らしてみせると、一人、また一人と手を伸ばし、真似をして腕を振ります。音が鳴るたびに顔がほころんで、転がっていく玩具を全身で追いかける子、ルーピングの玉を指先で一生懸命にたぐる子。同じ玩具でも、その子だけの楽しみ方がありました。 音の鳴る玩具に、じっと見入るひよこ組さん(0歳児クラス) すみれ組(1歳児クラス)は、戸外でカタツムリを見つけました。保育者の手のひらにそっと乗せてもらい、みんなでのぞき込みます。ツンツンと触るとコロンと殻に隠れ、しばらくするとニョキッと角を出す——その動きに、おそるおそる指を伸ばす子ども達。「カタツムリさんだよ」の声にだれからともなく『かたつむり』の歌が始まると、周りのお友達も次々に加わって、カタツムリを囲んだ素敵な大合唱になりました🎵 手のひらのカタツムリをそっとのぞき込む横顔 見つけて、伝え合う — 園外保育へ うめ組(3歳児クラス)は、初めての園外保育で境内へ出かけました。「早くお外いきたい」「お花咲いてるかな」と、出発前から期待でいっぱいです。境内に着くと、咲いている花や小さな虫を見つけては「紫陽花あった」「だんご虫いた」とうれしそうに伝え合います。紫陽花にもいろいろな色があることに気づいて、「青いのも触ってみたい」と手を伸ばしたり、小さな花をじっくり見比べたり🌸。「なんだろう?」が「こんなにあるんだ!」へと広がっていきました。 もも組(4歳児クラス)は、駅前公園まで。ダンゴムシや、なんと蛇にも出会いました。この日はお散歩図鑑を持っていったこともあって、気になるものを見つけると、保育者に聞く前に自分で図鑑を開いてみようとする姿が。「これってシロツメクサじゃない?」「教えて!」「何ページだよ」「私の見る?」——自分で見つけた喜びを、友達と声を掛け合って教え合っていました。 「これってシロツメクサじゃない?」お散歩図鑑を開くもも組さん(4歳児クラス) 「なんだろう?」は、未来へつづく 0歳の子が玩具をじっと見つめる目と、4歳の子が図鑑のページをめくる手。歳は違っても、どちらも「なんだろう?」という同じ問いから始まっています。だれに言われたわけでもなく、自分の内側から湧いてくる「知りたい」「やってみたい」という気持ち——これこそが、この先の学びを支える一番の根っこだと、私は長い保育の中で感じてきました。そして、見つけたものを「ねえ、見て」と隣のお友達と分かち合う、その分かち合いの経験が、人を信じ、共に生きる心を静かに育てていくのだと思います。 ご家庭でも、お子さんが何かをじっと見つめて立ち止まっていたら、どうか少しだけ、そのまま待ってみてください。急がなくて大丈夫です。その小さな「なんだろう?」の芽が、やがて自分で調べ、伝え合う大きな力に育っていきます。梅雨が明けた空の下で、子ども達がどんな「なんだろう?」に出会うのか、今から楽しみですね🌱

2026.06.06
こわいけど、やってみる 〜夢中が生まれる一歩〜
六月。園庭のあじさいが日ごとに色を深め、あちこちから運動会に向けた練習の声が響いてきます☔。運動会が近づくと、園全体が少しそわそわして、いつもと違う空気に包まれますね。予行、保育参観、二度目のスイミング、初めての衣装・・・。「いつもと違う」場面が続いたこの一週間、子どもたちは緊張と好奇心のあいだで、それぞれのペースで、自分から一歩を踏み出していました。 こわいけど、やってみる すみれ組(1歳児クラス)は、ホールでの運動あそびにも少しずつ慣れてきました。カラフルなトンネルを、全身を使って潜り抜けます。向こう側にぽんと出られると、ぱっと嬉しそうな笑顔。「やった できた」✨ 平均台では足元をじっと見つめ、そろりそろりと跨いだり、両手を広げてバランスをとりながら上を進んだり。真剣な横顔が並びます。担任は「『もう1回やってみたい』というワクワクしたエネルギーが溢れ、心も身体もたくさん動かしました」と記していました。 トンネルを抜けた瞬間、「やった、できた!」の笑顔がこぼれるすみれ組さん(1歳児クラス) うめ組(3歳児クラス)は、運動会の練習の合間、大好きな戸外あそびの時間。三輪車をお友だち同士で押し合ったり、お友だちを誘ってジャングルジムのてっぺんまで登ったり。雲梯では「足離すんだよ」「怖いけどやってみる」と声を掛け合いながら、一本ずつ手を伸ばして前へ。誰かがそばで見ていてくれるから、こわさの向こうへ手が伸びる。そんな時間でした。この日は、お友だちを誘い合って一緒に遊ぶ姿も、あちこちで見られました。 二度目のプールで もも組(4歳児クラス)は、この日が二度目のスイミング。朝から「今日はプールだね」と、その時間を心待ちにする姿がありました。前回よりもするりと水着に着替えたり、自分で水泳帽子をかぶれた子も。指先で帽子のふちを引っぱりながら、最後まで自分でやりきります。ビート板でプカプカ、バタ足にも挑戦。帰りのバスでは「プール楽しかった」「もっとプールやりたい」と、声が弾んでいました。 ビート板にお腹をあずけて、水の上でプカプカ浮かぶもも組さん(4歳児クラス) 言葉に置き換える さくら組(5歳児クラス)は、運動会に向けて俳句づくりに挑戦しました。「俳句は何文字で書くのかな?」。まずは五・七・五を確かめてから、「運動会で頑張りたいことはなんだろう?」「かけっこはどうやって走ったら勝てるかな?」と、一人ひとりと言葉を交わしながら考えます。「負けたくない!」「アナウンスは大きな声で言う!」。胸の中にある「やってみたい」を、五・七・五の器にそっと移していく。個性豊かな俳句が、いくつも生まれました。 指を折りながら五・七・五を数えて、言葉を紡ぐさくら組さん(5歳児クラス) この一週間の子どもたちを見ていて、心に残ったことがあります。それは、誰かが「やってみたい」を選ぶとき、そばには必ず、待っていてくれる人や、一緒にこわがってくれる友だちがいた、ということです。私は、大人が先回りして「こうやるのよ」と教えてしまうより、子ども自身の中から湧いてくる「やってみたい」を、静かに待つことを大切にしたいと思っています。こわさとワクワクは、いつも隣り合わせ。その揺れのただ中で、自分から小さな一歩を選んだ経験こそが、これから先、学びに向かっていく力の根っこになると信じています。 運動会の当日、あの一歩がどんなふうに花ひらくのか、私も今からとても楽しみです。ご家庭でも、お子さんが「こわいけど、やってみる」と小さな勇気を出した瞬間があったら、どうか結果よりも、その一歩そのものを、うんとほめてあげてください。子どもたちのはじめの一歩に、こころからの拍手を送りたいですね👏

2026.05.30
「こっちだよ」が聞こえた一週間
五月の空が日ごとに夏の色を深めていくこの頃。園庭には毎日、運動会に向けた練習の声が響いていました。かけっこのかけ声、お遊戯の音楽、弾む足音。初夏の日差しの下で、園じゅうが同じ本番を見つめていた一週間です🌱 見上げるまなざし その週の初め、いちご組(2歳児クラス)さんが初めての予行練習に参加しました。開会式からかけっこ、お遊戯、閉会式まで。かけっこで名前を呼ばれると「はい!」と元気にお返事ができて、日ごろの積み重ねがちゃんと形になっていました。緊張した面持ちの子もいましたが、保育者がそばに寄りそいながら、その子のペースを見守りました。 そして心に残ったのは、競技の合間のこと。いちご組さんは、大きいお兄さん・お姉さんの競技をじっと観ていたのです。「かっこいいね」「すごいね」——小さな声でつぶやきながら、あこがれのまなざしを送っていました。 お兄さん・お姉さんの競技をじっと見つめるいちご組(2歳児クラス)さん 伝え合う言葉、差しのべる手 翌日はさくら組(5歳児クラス)さんの英語の時間。この日は「Sendan Little Kitchen」の開店です。さくら組さんがお店屋さん、もも組(4歳児クラス)さんがお客さん。食べ物の準備も自分たちで整えて、お客さんを待ち構えます。 やってくると、注文からお会計まで、やりとりはぜんぶ英語。何度もあそびを重ねてきたからでしょう、スラスラと言葉が出てくる子が多く、注文が通るたびに、お店側もお客側も顔がほころびました。誰かに何かを伝え、それが相手にちゃんと届く。その手ごたえの積み重ねが、人と関わる楽しさを育てていくのだと感じます😊 英語で注文をやりとりする「Sendan Little Kitchen」— さくら組(5歳児クラス)さんのお店屋さん 木曜日には、うめ組(3歳児クラス)さんが運動会本番の親子競技「カード合わせ」の練習に取り組みました。この日は、さくら組さんが“親役”を引き受けてくれました。二人一組でカードを目指して走り、うめ組さんが選んだカードに、さくら組さんが優しく手を添えます。 「どれにする?」「こっちだよ」。走りながら交わされる声。ルールを覚えながら、二人で力を合わせて絵を合わせていきます。うめ組さんも、大きいお兄さん・お姉さんと組むと、不思議と流れに乗っていきました。 「こっちだよ」— カードを指さすさくら組さんと、見つめるうめ組(3歳児クラス)さん 手のひらから手のひらへ 一週間を通して私の心に残ったのは、「こっちだよ」と差しのべられる手のひらでした。いちご組さんは上の学年を見上げてあこがれ、さくら組さんは下の学年にそっと手を貸す。この縦のつながりの中でこそ、子どもは同じ時間を分かち合い、同じゴールを一緒に目指すよろこびを知っていくのではないでしょうか。あこがれる心も、世話をする心も、誰かに教えられて生まれるものではありません。園という毎日の暮らしの中で、自然と芽生えてくるものだと思うのです。 本番まで、園じゅうがもう少し同じ夢に向かって進みます。お子さんが「今日ね、お兄さんが手をつないでくれたよ」とお話ししたら、その日の誇らしい顔を、どうか一緒に思い浮かべてみませんか。当日、手のひらから手のひらへ渡っていくものを、楽しみにしていてください🌷

2026.05.23
「『くすぐったかったね』が絵になるまで」
五月も半ばを過ぎ、園庭の緑が日ごとに濃くなってきました。半袖で駆け回る子ども達が増え、風にも初夏の匂いが混じるこの頃です🌱。先日、子ども達がいちご園へ出かけました。真っ赤な実を頬張ったあの一日は、実はその日だけでは終わりませんでした。園に帰ってからの一週間、いちごは絵や絵の具に姿を変えて、子ども達の指先へと戻ってきたのです。 「美味し〜!」いちご園でのその日 いちご園に着くなり、うめ組(3歳児クラス)の子ども達から声が次々にあがりました。「あった!」「先生、見て〜大きいの!」、そして真っ赤な実を口に入れて「美味し〜」。出かける前に、緑・白・赤と色を変えていく実を絵本で観ていたからでしょうか、赤く熟れた実へすっと手が伸びていきます。中には、いちごの葉が足に触れて「くすぐったい」と身をよじる子もいました。 一方、さくら組(5歳児クラス)は、着くやいなや一目散に大きな実を探し当て、口いっぱいに頬張ります。同じ農園でも、5歳の子ども達は葉の形や、いちごが茎のどこから生まれているのかまで、しっかりと目に焼きつけていたようです🍓。 「あった!」赤く熟れたいちごへそっと伸びる、うめ組さんの手 帰ってからの一週間、指が思い出す いちご狩りの翌日、もも組(4歳児クラス)は画用紙に向かいました。「長い茎にいちごがなっていたよね?」と保育者に確かめたり、「真っ赤ないちご、たくさんだね」と、あの光景を嬉しそうに思い浮かべたり。友だちの絵をそっと覗きながら、自分の見てきたものを言葉と手で確かめ合っていきます。 昨日の景色を思い出しながら、画用紙に向かうもも組さん そして狩りから4日目、うめ組の保育室では、活けてある本物のいちごの葉をじっと観ながら絵を描いていました。「葉っぱはギザギザしてたよ」と気づいた子が、ふと手を止めてつぶやきます。「だから足がくすぐったかったのかなぁ?」。あの日の、足のくすぐったさにまでさかのぼって考えているのです。丸シールで花を表現し、5日間かけて、その子だけのいちごが一つ、静かに実りました。 「葉っぱはギザギザしてたよ」— 本物の葉と見くらべながら動く、うめ組さんの指先 思い出しながら、手が動く 一日の体験が、その日では終わらず、翌日、また次の日へと形を変えて続いていく。私は、この「思い出しながら手を動かす」時間にこそ、子どもが育つ確かな芽があると思っています。 くすぐったさ、赤い色、葉のギザギザ——五感で受け取ったものが子どもの内側にそっとしまわれ、やがて「あれは何だったんだろう」「もう一度あらわしてみたい」という気持ちになって、指先からあふれ出してくる。誰かに言われて描いたのではありません。自分の中から湧いてきたその気持ちこそが、これから先、自ら学びに向かう力の源になっていくのだと、長年子ども達を観てきて感じています。友だちと「こういうのがあったよね」と同じ景色を分かち合う時間もまた、人を信じ、共に生きるよろこびの土台になっていくのですね。 体験が記憶になり、表現になって、また次の体験へ — 子どもの中でめぐる学びの輪 ご家庭でも、お子さんが園での出来事をぽつりと話し出すことはありませんか。すぐには出てこなくても、あの日の景色は、指先のどこかにちゃんとしまわれています。「どんないちごだった?」と、そっと聞いてみてください。思い出をたぐるその時間が、また新しい何かに変わっていくかもしれませんね🌿。

2026.05.16
「これがいい」から、夢中は始まる
新緑がまぶしくなり、園庭を渡る風にも初夏の匂いが混じるようになりました。運動会に向けた準備や、夏野菜の苗植えが本格的に始まり、子ども達の毎日はいつにも増して賑やかです。そんな一週間、園のあちこちで同じ言葉が聞こえてきました。「これがいい」。誰かに言われたからではなく、自分で選び取った子ども達の声です。🌱 「これがいい」の声があちこちで いちご組(2歳児クラス)では、傘の製作をしていました。カタツムリやカエルの写真をじっと見て、雨の日のイメージを膨らませてから、青いシールを雨粒に見立てて貼っていきます。「雨、雨」とつぶやきながら貼る位置を真剣に考える子。「雨くっついちゃった」と傘の面にぺたりと貼り付けて笑う子。同じシールでも、貼る場所は一人ひとり違います。「ここに決めた」——その小さな一言に、自分で決めた誇らしさが滲んでいました。 「ここに決めた」——青いシールを雨粒に見立てて貼るいちご組(2歳児クラス) うめ組(3歳児クラス)では、運動会の障害物走でもらえる「宝物」作り。王冠・メダル・ネックレスの三つから、それぞれ「これ」と選んだものを作っていきます。同じ王冠でも、白い所がなくなるように折り紙を重ねて貼る子、重ならないように並べて貼る子。「赤だね、青だね」と色を選ぶ手つきにも、こだわりが表れます。出来上がると友だちと見せ合い、頭に合わせたり胸元に置いたり。「見てみて、出来上がったよ」と得意げな顔が並びました。👑 「見てみて、出来上がったよ」自分で選んだ王冠を見せ合ううめ組(3歳児クラス) 選んだから、こんなに丁寧 もも組(4歳児クラス)のこの日は、前のクラスの話し合いで自分たちが決めた夏野菜の苗を、いよいよ植える日でした。どうやって植えるのか説明をしっかり聞いて、プランターに土を入れ、優しく苗を植えていきます。「オクラ植えたんだ!」「私はトマトにしたよ!」——植え終わると、口々に自分の選んだ野菜を報告し合い、たっぷりと水をあげていました。自分で選んだ苗だからこそ、これからの水やりや世話にも、きっと張り合いが生まれていくのでしょう。 自分で選んだ夏野菜の苗に、たっぷりと水をあげるもも組(4歳児クラス) さくら組(5歳児クラス)では、運動会に向けた万国旗づくりが進んでいました。ずらりと並んだ見本を前に、友だち同士で話し合いながら、描きたい国を選んでいます。「星がある国旗にしよう」「黒の線が入っているのがかっこいいよ」。決めた後の塗り方にも、一人ひとりの工夫が光ります。色をくっきり出そうと力を込める子、小さな星が消えないように周りを縁取ってから塗り始める子。同じ国の国旗でも、同じものは一つとしてありません。 描きたい国を選び、色を丁寧にのせていくさくら組(5歳児クラス)の万国旗づくり 選ぶ、ということ 四つのクラスを覗いて、私は改めて思いました。「これがいい」と自分で選ぶとき、子どもの目は違う輝きを帯びるのだ、と。誰かに言われて動くのではなく、自分の内側から「これをやってみたい」という気持ちが湧いてくる。その気持ちこそが、丁寧に塗る手や、優しく苗を包む指先や、貼る場所を選び抜くまなざしを生んでいるのだと思います。二歳の「ここに決めた」から、五歳の「こう塗りたい」まで。選び取る力は、こんなにも早くから、こんなにも豊かに育っているのですね。この小さな「自分で決めた」の積み重ねが、やがて自分の力でやり遂げる自信につながっていくと、私は信じています。 運動会の日、我が子が身につけている宝物や、はためく万国旗を見かけたら、どうか聞いてみてください。「これ、どうやって選んだの?」と。きっと、その子だけの物語が返ってくるはずです。次の一週間、子ども達がまた何を「これがいい」と選ぶのか、私も楽しみにしています。🎏

2026.05.09
『あのお兄さんみたいに』が芽ばえた一週間
大型連休が明け、園庭の木々の緑が一段と濃くなりました。久しぶりに友だちの顔がそろった園庭には、いつもより少し高い声が響いています🌿。この一週間、私はあちこちで同じひとつの光景に出会いました。小さな子が、大きな子の背中をじっと観ている——そんな姿です。 ちいさな観察者たち 連休明け、久しぶりに園庭へ出たすみれ組(1歳児クラス)。ちょうどその日、園庭ではさくら組(5歳児クラス)のお兄さん・お姉さんがかけっこの練習をしていました。それに気づいた子は、その場に立ち止まってじっと観ています。かと思えば、真似をして一緒に走りだす子。ブランコに乗りたくて、両手を差し出し「かーしーて」と身振りで合図を送る子。担任は「それぞれのあそびの中に、一人ひとりの変化や成長が感じられました」と振り返っていました。 同じ連休明け、いちご組(2歳児クラス)の朝の会。休み明けで泣いてしまう子が多いのではと構えていた担任は、思いがけない姿に出会います。ある子が、みんなに整列を促したり、泣いている友だちにそっと寄り添ったり——「クラスのお手本になりたい」という気持ちが、その小さな背中いっぱいににじんでいたそうです。すると、その姿を観た子が「自分もしなくちゃ」と動きだす。憧れは、同じ年齢の中でも静かに伝わっていくのですね。 見られて、伸びた背すじ 翌日、もも組(4歳児クラス)は初めてバスに乗って、さくら組(5歳児クラス)のスイミングの見学に出かけました。到着したときは少し緊張気味だった子ども達も、プールの中の年長さんが見えると、表情がふっとやわらぎ、真剣な眼差しに変わります。「かっこいいな」「私もやりたい。出来るかな」——憧れの言葉が次々にこぼれました。 プールの中の年長さんを見つめる、もも組さんの真剣な眼差し 帰りのバスでは「青いゾウは男の子、ピンクのゾウは女の子」「プールでのお約束は?」と、子ども同士で確かめ合う姿が。観て終わりではなく、憧れがもう自分たちの言葉になって動きだしていました🚌。 そして同じ日のプールサイド。もも組が見に来ていると知ったさくら組(5歳児クラス)は、「かっこいい姿を見せたい」と朝から張り切っていました。前の回は楽しくなりすぎて注意を受けることもあったそうですが、この日は先生の話をよく聞いて頑張る姿があり、コーチから「出来るようになってる」と褒めてもらったのです。見られる側になった経験が、いつもより一段深い集中を引き出していました。 もも組さんに見られながら、コーチの話にぐっと集中するさくら組さん あこがれは、自分の中の火を灯す この一週間、下の子は上の子を観つめ、上の子は見られることで背すじを伸ばしました。憧れというのは、誰かに「やりなさい」と言われて生まれるものではありません。心の奥がふっと動いて、「あんなふうになりたい」「やってみたい」という火が、自分の内側から灯る。その火こそが、子どもを次の一歩へと押し出していくのだと、私は長年の保育の中で感じてきました。そしてその火は、たいてい一人では灯りません。同じ時間、同じ場所で、誰かと心を響かせ合ったときに点るのです。見る子と見られる子、その間を行き来する眼差しの中で、子ども達は互いに育ち合っています。 ご家庭でも、お子さんが誰かの真似をしてみせる瞬間があったら、どうか「あんなふうになりたいのね」と、その芽を一緒に喜んでみてください。憧れは、未来へ向かう小さなエンジンです。次はどんな「やってみたい」が生まれるのか、私も楽しみにしています🌱。
